テニアン旅行記(2002.6.8-11

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大阪・道頓堀編

サイパン編

テニアン編

金環日食編

~大阪・道頓堀編~

待ちに待った週末がようやく来た。テニアンで観測できる金冠日食を見にいくのだ。
私自身、初の天文海外遠征でもある。いやがおうでも期待は高まる。

 

インターネットで見る限り、サイパンの天気は、向こう一週間晴れマークが一つもない。
それどころか東南アジアに大きな台風があり、そこからの雲がサイパン方向へ大きく延びている。
台風の今後の進路次第では大荒れの天気になることも考えられるのだが、格安チケットでの
渡航のため、いまさらキャンセルはできない。
それに、天文イベントの場合は、
そのときに現地に いなければ意味がない。
たとえ来週ピーカンになったとしても、もはや手遅れなのである。

 

「やっぱ行ってみるしかあんめー。」

 

心は決まった。

 

 

「お待たせ!」
堀川さんが迎えに来てくれた。半袖半ズボンだ。すでに心はサイパンというところか。

 

「よっしゃ、行きますか!」
堀川号は順調に滑り出す。次は橋本さんだ。諫早へ向かう。

 

・・・しまった。禁煙車だった。乗る前に一服しておくんだった。
やはり緊張していたらしい。
「とりあえず早く着いてくれ...」

 

 

やっと着いた。
途中、渋滞はなかったのだが、結構長く感じる道のりであった。
やはり高速で移動する物体の中では時間の進み方がゆっくりになるのであろうか。
(注:ほんとは主観時間は変わらない。)
うーん、テニアン島は遠いぞ!(まだ長崎だっちゅーに)

 

 

ピンポーン。おそるおそる橋本邸の呼び鈴を押す。
はじめて訪ねる家の呼び鈴を押すのは勇気がいるものだ。

もし面識のない家族の方がでてきたら、どうしよう?
ピンポンダッシュで逃げるか?いやそれはまずい。。。

心中の不安をよそに、橋本さんが出てきた。笑顔だ。

 

 

「これっス」 P2だ。
「で、でかい」
赤道儀の中では小さい方とは言え、実際に運ぶ荷物としてみると、それなりにでかい。
カートで運ぶことにしといて良かった。

 

「よっこらしょ」橋本さんがリュックを担ぐ。
うん?ちょっと待て、リュックも結構でかいなぁ。私の荷物の倍はあるぞ。
一体何が入っているのだろう?まぁいいか。
荷物を堀川号に積み込み、空港めざして出発!

 

 

「今月号の天文雑誌はもう見ましたか?」橋本さんが尋ねる。

「まだです」

「持ってきましたよ。見ますか」

「ええ」

天文ガイド・星ナビがでてくる。
旅行の出費で緊急縮小財政を強いられている私にとってはひさしぶりにゆっくりみる天文雑誌だ。

 

「飛行機のチケットは忘れてきたりしてないですか?」
運転中の堀川さんが笑顔で尋ねる。
「ええ。これです」
橋本さんがチケットを私に渡した。一応中身を確認しておこう。
うん。ちゃんと全部入ってる。おっけー。
おっ、航空券の向こうに大金が!(注:私の全所持金よりも多かった)
ちょっとビビって橋本さんに返しながら、
「橋本さん、お金が入っとっですよ」
「あっ、お金を二つに分けとったとです。忘れとったです(笑)」
「なるほど」

 

 

34号が混んでいたので、大村の裏通りを走る。
さすが、じもてぃ。やるねぇ、堀川さん。

 

多良岳登山の話になった。結構きついらしい。
「今度一緒にどがんですか」
「いえいえ私にその体力はありません(苦笑)」

 

大村工業高校の横に来た。

 

「昔そこのはらっぱでですね。煙があがりよったとですよ。
 「おお野焼きばいな」とおもっとったら、すごい勢いで燃え広がってきて
 「こりゃおかしか。こいは火事ばい」といっておおあわてで
 全校生徒でバケツリレーですわ。
 ようやく消して周りをみまわしたら、こどもが三人呆然と立っとって、
 手にマッチば持っとったとですよ。
 「わいたちか!火遊びばしたらいかんぞー」と怒りましたよー」

などといろいろな話を聞いているうちに、空港に着いた。あっという間だった。

 

 

空港にはすでに山本さんが居た。これで勢ぞろいだ。P2を預けて、搭乗手続きを済ませた。
堀川さんが車を自宅に置きに行ったので、しばしイスに座って待つ。

 

橋本さんが何か取り出す。おっ、携帯液晶テレビだ。

空港の中は電波が届きにくいらしく、何も映らない。

「こいはいくらぐらいと思いますか」

「えーと2万ぐらいじゃなかですか」

「安かったとですよー。三千円でしたー。
 店に入ったら山積みになっとって、昔の在庫品の一掃処分ですね。
 はじめから入っとる電池はすでに寿命になっとるぐらいですけん。
 二・三年は倉庫にあったとじゃなかですかねー」

「そりゃお買い得でしたね」

 

山本さんが双眼鏡を取り出す。ちょっと借りて覗く。

「ほぉよく見えますね」
「そうでしょう」

浮かれた様子で次々と装備を取り出す三人のオヤジはずいぶん不思議な風景だったと思う。

 

 

堀川さんが来た。

よし、昼めしだ。腹へった。ちゃんぽん食うばい。

メニューを一通りみた後、みな口々に「ちゃんぽん」。うーん最初から決まっていたのね、やっぱし。

 

堀川さんのビールが来た。

「そんじゃお先に。」

「どーぞどーぞ」

おおっ、うまそうに飲むなぁ。ちょっとくやしい。

 

搭乗口に入る。

ありゃ、みなさん手荷物検査に引っかかってる。

こりゃ待っていてもしょうがない。一足お先に一服しにいく。

我慢していただけあってうまい。ふぅ落ち着いた。

おっ、JALのマイレッジ登録マシンだ。JALで行くのははじめてだからな。
とりあえずカード作っておこう。なんかもらえるのかな。
でも次はいつになるんだろう。まっいいか。

 

 

伊丹に着いた。P2を受け取って、ホテルへ向かう。

えっと最寄りの駅はどこだっけ?

一泊、2,100円という以外は何も覚えてない。

どうもすみません、堀川さん。

 

 

モノレール・私電を乗り継いで、環状線に向かう。

 

おお階段じゃん。P2を抱えて階段を下る。
さっき途中で抜いた子連れの足の長いお母さんに抜き返されてしまった。
ちょっとくやしい。

 

 

環状線はどっち回ったら近いの?
「すみませんー」近くを歩いていたお姉さんに聞く。「こっちでいいそうです」

 

電車が来た。ドワーッと人が降りてくる。おお、大阪ってやっぱまちじゃん。

 

新今宮駅に着いた。明日の関空への電車は6時半かー。早起きせねば。

 

駅を出た。うん。下町という感じ。なかなかいいね。東京の下町もこんな感じだった。

 

ホテルに着いた。部屋はまあまあ。こんなもんでしょ。十分十分。
一休みして、夕暮れの大阪のまちへ。
地元の商店街を抜けながら、通天閣へ向かう。

 

 

 

一杯飲み屋とすし屋が多いな。
おりょ、この人だかりは?
おおっ、将棋うっとる。なるほどなるほど、こういうところが大阪なんやねぇ。

 

おっ、スマートボールだ。懐かしい。
昔中央橋のあたりにアレンジボールとかスマートボールがあったなぁ。
「ここらへんが新世界っていうの?」ふーん。

 

歩きながらふぐのでっかい看板の下を右に曲がると、おおっ通天閣が見えた。


あれっ?日
の赤いイルミネーションじゃなくて、日○ITの青いイルミネーションだ。
うーん...そういえば長崎に残してきた仕事に日
○ITさんからの問い合わせがあったなぁ。
来週うまくかたづくかな?しばし暗くなった。

 

やってくれるなぁ、通天閣。

 

通天閣の下に着いた。「登って見ますか?」「有料かな?」有料であった。やめた。
坂田三吉の碑があった。なるほど。

 

 

さて、何食う?

「寿司なんかいいですね」

「お好み焼きは?」

「じゃあお好み焼きを食ってから、寿司というのは?そのほうが安くあがりそうだし」

「それで行こう」

 

お好み焼きやさんに入った。おばちゃんが注文とりに来る。ばりばりの大阪人だね。

「これって自分で焼くんですか」

「いーや焼いてきます」

そりゃそうだ。

よそもんに大阪のお好み焼きが、店のオヤジほど上手に焼けるとは思えん。
安心して、モダンを頼む。

 

出てきた。うまい!しかもボリューム満点。

「広島風とは全然違うね」

「そりゃそうだ」

ホグホグいいながら食べ続ける。

 

腹いっぱいになった。

寿司はもういい。

「グリコの看板があるところにはどう行ったらいいんですか」

「あっ道頓堀やね。百円バスで行ったらいい。通天閣の下からでとる」

「そうですか。ありがとうございました。どうもごっそうさん。」

 

再び通天閣へ。

 

途中、先ほどのスマートボールが目に付く。

「ちょっとやってみません?」「そうしましょう」

 

台に座って100円玉を入れる。

上からジャラジャラジャラと、ビー球の白いやつがでてくる。

それを一発ずつ打つ。なかなか難しい。昔、玉屋の上でやったっけ。

 

一発ずつ慎重に打つ。

入った!

パッカン。

チューリップが開く。

ジャラジャラジャラ、玉が出てくる。

おもしれー。

おっ、また入った。

 

結構ハマる。玉が大きいので、目の前のガラスのところにズラーッと並ぶ。

 

すげー。係りのお兄さんが玉を入れる皿を持ってきた。おお、パチンコやみてー。

そうこうしているうちに、みんなが戻ってきた。

「おおっ、たくさん出しとるですね。私んとはすぐ終わりました。あっ、入った。
 今のは惜しかったですね」橋本さんが応援してくれる。

 

堀川さんが白い袋をぶらさげてもどってきた。

景品の「かっぱえびせん」だ。

 

おっとまた入った。

出るなぁ。

 

いいかげんやめようかな。

じゃあ300発でやめましょう。

ノーチラス号のおもちゃを手に入れた。

しょうもないものなんだけど、なぜか、すごい達成感。

おもしろかった。意気揚々と通天閣に向かう。

 

 

バスが来た。

ちょうど終点あたりが道頓堀らしい。着いた。

あれっ?どこにあるんだろう。横断歩道で待っていたお姉さんに聞く。

「グリコはどっち?」「あっちです。」

ずいぶんあるとのこと。まっ、いいか。腹も一杯だし、歩きましょう。

 

 

しばらく歩くと、にぎやかになってきた。

おっ、川だ!あれでは?

橋の上へダッシュ!

見えた!あれだー!

向こうの方に青いグリコが見える。

昔良く聞いていたロックグループのアルバムのジャケットの背景があれだったなぁ。

「あっち行ってみましょう」もう一本向こうの橋へと向かう。人がうじゃうじゃいる。

 

 

ここが道頓堀かぁ。

目的の橋についた。そうそうそう。このアングル。気分はすっかり外タレじゃん。

おおっ、確かにワールドカップ特別バージョン。青いユニホーム着とる。

 

さぁ撮影だ。

「やっぱグリコのポーズを取ったほうがいいんじゃ?」と私。

「それでいきましょう」さすが堀川さん。即答であった。

橋本さんもニコニコ。よし乗り気だ。

山本さんがカメラを持って離れる。

「ちょっとすみませーん。写真撮りますー。せーの。」

みんなでポーズを決めた。

 

周りで思い思いに話していた人たちが一斉にこちらを振り返る。

ちょっとそこまでは予測してなかった。

テレた。

まっ、いーか。大阪はお笑いのまちだし。(^^;

 

 

おおっ、カニもユニフォーム着とる!すげー。

あっ、食い倒れのパタパタ人形じゃん。撮ろう!撮ろう!

はい。太鼓を叩いてぇ!

いやあ、大阪のまちはおもしろいねぇ。

 

おっ、ジャンボたこ焼きじゃん。

本家と元祖が二つ並んでいるのに、手前の方だけ行列が。なぜ?

さっそく山本さんが買ってきた。うん?それほどおいしくないねぇ。

タコが大きすぎて固い。痛っ、あいたー、歯にきた。

「もう一個どうです?」

「いや虫歯がうずきだしたので、もうやめます。すみません」

「どう?」

「今いち」

 

堀川さんが横で食べていたカップルに聞いた。

「おいしいです?」

「さっきの店の方がおいしかったです」

「どこ?」

よし、行ってみよう!

着いたと同時に橋本さんが並ぶ。

例によってニコニコしている。楽しそうだ。

 

しばらく待った後でたこ焼きとジュースを両手に持って、橋本さんが戻ってきた。

さっそくパクッ。おいしかったけど、すげー熱かった。

 

そんなこんなで当初予定していた「通天閣」「お好み焼き」「グリコ」「カニ」「たこ焼き」は
クリアできたので、ホテルへ戻った。

 

部屋に戻ってビデオを見た。

ちょうど見てなかったパールハーバーがフロントにあったので、借りてきたのだ。
批評家が言ってたほどちゃちい作品ではなかった。なかなか良かった。
一人ウルウルしながら見ていた。こうして、大阪の夜は更けていく。

 

 

朝が来た。

出発の朝だ!

みんな気合いがのった顔をしている。いい感じ。

朝のつめたい空気の中、駅へと向かう。

しばらく電車で揺られていると、関西空港が見えてきた。

いよいよだ。

 

一服した後、JALのカウンタへ向かう。

堀川さんと橋本さんはP2を預けるため、別のカウンタへ。

私は山本さんと二人で搭乗手続きをすませる。ガラガラだ。

よし、次は税関だ。ここもガラガラ。

出国手続きを済ませて、搭乗口へ向かう。

 

しまった。

朝早すぎて店が開いてない。

税抜きたばこを仕入れていく予定だったのに、残念。

まっ、しかたないか。

搭乗口に着いた。

 

しばらく待っていると橋本さんと堀川さんが来た。

堀川さんがニコニコしている。

「どうしました?」

「いえお酒を買ってきたんです」

「えっ?開いてました?」

「ええ」

しまった。

これは戻ってタバコを買わないと!

ダッシュで買いにいった。これで良し。

 

 

うーん、暇だ。

そうだ。入国審査カードでも書こう。

「堀川さん、泊まるホテルってどこでしたっけ。」

堀川さんと飛行機の席が離れていると、記入するときに聞きにいくのが面倒だから、
今のうちに聞いておこう。

「マイクロビーチホテルです」

「そうですか」

書いていると、山本さんと橋本さんが不思議そうな顔。

「それ何すか?」

「はっ?入国審査カードですけど」

「?」

「サイパンに入国するときに出すんです。飛行機のチケットの中に入ってたでしょ。」

「ああこれですね。私も書いとこう」山本さんが取り出した。

 

橋本さんがつぶやいた。

「飛行機のチケット入れがなかとです。飛行機のチケットは持っとっとですが。」

「ええっ?だってあの中にお金が入っていたんじゃ?」

「そうなんですー。たぶん搭乗手続きしたときにカウンターに置き忘れてきたごたっです」

 

「あっ、分かった。さっきの呼び出し、それですよ。橋本さん!」

だしぬけに堀川さんが言った。

「へ?」

「いやこっちに来るときに呼び出されたごった気のしたとですけど。
 はっきりせんやったけん、もう一回呼ばれたら行こうということで、
 ここまで来たっですよ」

「もう!でも、それなら大丈夫ですよ。JALのカウンタへ行ってそう言えば」

「大丈夫ですかねぇ?ちょっと行ってきます」

 

それからしばらくして戻ってきた橋本さん。

「こっちに持ってきてくれるそうです。
 でも、『どんな封筒?』としつこく聞くとですよ。
 『普通のチケットいれるやつ』と言っても、何度も聞くとです。
 『だから
普通の』と言いましたけど。」

 

それからしばらくしてJALの係りの人が届けてくれたので、無事クリア。

「良かった良かった」

「いやあ入国審査カードをここで書こうと思わなかったら、危なかったですねぇ」

「そうですねぇ」

搭乗口のドアが開いた。さて、出発だ。

 

こうして、我々はサイパンへ無事旅立ったのであった。

(サイパン編へつづく)

 

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